NFL San Francisco 49ersのホームスタジアムの移転問題の続き。49ersがSanta Clara市への移転を目指すと表明して、市役所と交渉を進めていったが、市の目玉でもあるNFLチームが市から出て行くのを黙って見ているわけには行かない。
San Francisco市はオリンピック招致でケチのついたCandlestick Park(現在のスタジアムのある場所)の再開発をあきらめて、新たな提案を持ち出した。それがHunters Pointというもの。場所は以下の写真の通り。
上の地図で分かるように、Candlestick Parkの北側に位置する埠頭のような場所である。ここには昔アメリカ海軍の軍港があり、軍艦を作るための工場があった。第2次世界大戦後、海軍はここから撤退して、現在は完全な廃墟になっている。
ここはたびたび再開発の話が出ては消えていた場所だが、San Francisco市のNewsom市長はCandlestickの後の代替スタジアムとして、この地の再開発をぶち上げる。
この際、SF市は再開発資金をすべて市側でまかなって、その中にスタジアム建設費も含まれるとした。つまり、チーム側には負担を求めないのでSF市に残って欲しいと持ちかけたわけだ。
しかし、技術的な問題がある上に、オリンピック招致での不信感も残っていた49ers側は、これはあくまでSanta Clara案が頓挫した時のバックアッププランで、本命はSanta Clara案であるという姿勢を崩さなかった。
このHunters Pointは何もない広大な土地が広がったところで、もしここにスタジアムができれば、Santa Clara案で問題になっている駐車場の心配はない。収容人数に相当する車を十分に収容でき、テールゲートバーベキューもやり放題だ。
しかし、このHunters Pointには致命的な問題がある。
まず第1に、この土地が放射線で汚染されていること。ここにあった造船工場は第2次大戦前の基準で運営されていたため、環境対応がずさんであった。そのため、廃墟となった後も放射線汚染が残ったままになっている。ここにスタジアムやらショッピングセンターを作るには、その前に土地の洗浄が必要となる。これについて市長側は、2年でできるとか3年でできると言っていたが、それは49ers側がこの話に乗ってくることが前提。49ersがこの話に乗らないので汚染はそのままになっている。
もう1つはアクセスの悪さ。上の地図でBayshore Fwyと書かれた道が、高速道路である。現在のスタジアムはこの高速のそばにあるが、それでも道がボトルネックになっている。実はスタジアムと高速道路の間に山があって、これを迂回しなければならないのだ。Hunters Pointはこれよりもさらに北側にある。高速に乗るにはもっと北側に回らなければならない。Hunters PointとBayshore Fwyを結ぶ道を作ればいいのだが、その予算は計画には入っていない。
この2つの問題があるため、49ers側はHunters Pointをバックアッププランに位置づけている。というより、Santa Clara案を全力で押しているので、Hunters Point案は「相手にしていない」有様だ。市長側もすっかりあきらめているのが実情か。
49ersの社長のJed Yorkは、この他のバックアッププランとして「Oakland移転案」と「現スタジアム改修」を述べたことがある。前者はOakland Coliseumに移転してRaidersと共有しようというもの。しかし、この球場はRaidersの他に、野球のOakland Athleticsも使っており、9月は野球とNFLのシーズンが重なる。Santa ClaraのスタジアムをRaidersと共有することはあっても、現在のOaklandは不可能であろう。
また、現スタジアム改修は、現在のスタジアムの仮設スタンドがある位置に、ビルを作ろうというもの。これはちょっと想像しにくいのだが、今の仮設スタンドはグラウンドから2階席までをつなげたような形になっている。これを2段にするようなものか?しかし、スタジアムの客席の一部に「ビル」を立てたら不格好になるに決まっている。少しずつスタジアム全体を改修していくような計画ができていないと無理だろう。
というわけで、現在チームはSanta Clara案1本に絞って実現しようとやっきになっている。
放射能汚染ですか。
恐ろしい。
投稿情報: ちゅう @m78seven | 2010-04-14 17:33