Mt. RushmoreとCrazy Horseを見て、食事をしたが、まだ初日の午後である。Deadwoodの町を出てUS-90号線に乗って西に向かうとすぐに、Wyoming州に入る。ここは全米で最も人口が少ない(49万人)州。それでいて、広さは日本の本州と九州を合わせたのと同じくらいというのだから、人口密度はすごく低い。ひたすら山と草原が広がっている中に、いくつかの市(City)と、町、村が点在している。村に至っては人口300人とか50人とかいうところがある。
さて、そういう何もない草原の高速道路を走ると、左にDevil's Towerが見えてくる。写真のような切り立った山のようなもので、周りが平らなだけに異様な風景に見える。なぜこんなものができたのか非常に不思議なのだが、要はマグマが冷えた花崗岩である。地中のマグマが熱く燃えて、噴火しようと地上に向かって上昇していったが、後一歩のところで噴火せず大気で冷やされて止まってしまった。その後数百万年の間に、雨などで地表の土が削られて、マグマの部分がむき出しになって、写真のような姿になったのだそうだ。
この姿を見て、白人は悪魔の塔と名づけたが、先住民からみると「クマの家」となるそうだ。これは伝説で、昔8人の兄弟の物語。兄弟といっても7人の姉妹と1人の弟。この弟が突然クマに変身してしまい、姉たちはそれを見て逃げる。ある切り株の上に7人が乗ると、その切り株は空に向かって上昇していった。弟のクマはそれを追いかけて切り株に登ろうとしたけど、落ちて死んでしまったとか。Devil's Towerの側面には縦にたくさんの溝が走っているが、これはクマの爪跡なのだとか。
このDevils TowerにはVisitor Centerがあり、タワーの周りを一回りするハイキングコースがある。2キロくらいのものなので、簡単に歩ける。タワーを全方向から見ることができる。太陽の方向によって、陰になったりするが、基本的にはどこから見ても同じように縦の溝が見えるだけである。この溝というか筋はマグマが冷えて固まったときに、柱状に切れていったものだそうだ。よく見ると6角形をしている。
このDevil's Towerは国立公園(National Park)ではなく、国定公園(National Monument)である。国立公園ではないが、それに準じる地域のこと。Mt. RushmoreもNational Monumentである。Mt. Rushmoreは人工的建造物だが、Devil's Towerのような自然にできたものを見ると、アメリカの国立(国定)公園には圧倒されるのである。よく「アメリカの大自然はすごい」と言われるが、この「大自然」というのは実際に見たことのない人に伝えるのが難しい概念だ。「自然」はまさに人の手の入らない、自然がそのまま残されている。アメリカの国立公園はほとんどすべてが国有地で、個人が勝手に切り開いたりできない。しかも我々のような観光客にも「動物に餌をやるな」などこと細かい規則が強制される。そしてその自然は「活きている」ということ。マグマが隆起したり、活断層が動いたり、それらを雨、雪、氷河が削ったりして大きな造型を見せる。そしてそれが何百万年~何億年という気も遠くなるような時間をかけて作られている。空間的な大きさもそうだが、これができる時間の長さこそが「大自然」を感じさせてくれるのである。
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