昨年11月、Vintage Computer Festival 8.0 (1) Sellam Ismail というエントリを書いたが、その後このSellamとメールで連絡を取っていた。日本でも骨董コンピュータフェスティバルのようなものが開けないかということを話し合ったが、その時は日本のコレクターを集めるのが大変だとか、会場を借りるのに金がかかるなどいろいろあって難しいと断念した。しかし、Sellamのコレクションを見せてくれないかと聞いてみたところ、快くOKしてくれた。
「一人で見るのはもったいない」と思い、JTPAで提案して一緒に見たい人を募ってツアーにした。すると古いコンピュータを見てみたいという人が最終的に8人集まった。場所はLivermore。ここもシリコンバレーの一部かも知れないが、東側のはずれといったところだ。
訪問先はVintage Tech という会社。行ってみると間口の小さな貸事務所である。Sellamに招かれて入ってみると、手前の部屋にはすでにガラクタのようにいろんなものが積み上がっている。さらに置くにいってみると、そこは巨大な倉庫になっていた。
棚にはまさしく「山のように」古いコンピュータが積み上がっている。「自由に中を歩き回っていいよ」と言われたのだが、通路は上の写真のように狭い。「写真を撮るのなら、あのハシゴに登れば倉庫全体が見える」と言われてそのハシゴに登ってみると、
こんな感じだ。全部で2000台はあるという話だったが、本当に広い倉庫なのに所狭しとコンピュータが並んでいるのだ。
最初にSellamが説明してくれたのが、上のマシン。分解されて原型をとどめていないが、Xerox Starだ。1980年に世界初のウィンドウシステム、GUIを搭載したマシンである。右隣にボックスが見えているが、これがこのマシンのハードディスクドライブ。このページの最初でSellam本人が持っているものだ。このディスクの容量は40MB。「君の持ってるデジカメの方が容量あるねえ」などという話をしていた。
上の写真はApple Computer最初のポータブルMac。マウスのかわりにトラックボールが付いているのが時代を感じさせる。キーボードの部分が取り外せて、トラックボールが右にも左にも付けられるということであった。
Apple IIなんかこのように山と積まれている。この倉庫はあまりちゃんと整理されているとは言えないので、何がどこにあるのか分からない。Apple関係でいうと、このようにApple IIが固まって積まれていたが、Macintoshはあちこちにばらばらにおいてあるし、初代iMacなどは床に転がっているような状態だった。最初に「Apple Iはありますか?」と聞いてみた。すると、「うーん、さすがにApple Iはなかなか出てこない。この前取引したときは2万5千ドルしたよ」と答えてくれた。Sellamの会社Vintage Techの一つの仕事は、このように古いコンピュータを取引することである。自分のコレクションにないものでも、高く買い取るユーザがいたら、手放してしまうということだろうか。
こちらはTRS-80。アメリカの家電販売会社のRadio Shackが出していたコンピュータだ。Z80がCPUでBASICが載っていたはず。これは昔は実物を見たことがなくて、ASCIIなどの雑誌で写真を見ただけだった。今日見たモデルは5インチFDが2つもついたイカツイ形であった。
最後はVT105のモニタとキーボード。これは「VT100はあるか?」と聞いたところ、「どこかにあったはずだ」と言ったSellamがあちこち探して瓦礫の下の方から発掘してくれたものだ。VT105は聞いたことがないが、グラフィックス機能を拡張したものだそうだ。
この他にこのマシンたちのマニュアルと、昔のコンピュータの教科書、雑誌もたくさんあったが、そちらはちゃんと本棚と箱に整理されていた。いつまで見ていても面白かったが、1時間半くらいしたところでお礼を言って失礼した。
Livermoreはシリコンバレーの中では郊外だが、これだけの倉庫を借りるだけでも安くはない。Vintage TechのビジネスはAppleのところで書いたように、古い(骨董価値のある)コンピュータの取引。それに昔の8インチFDやテープなどの古いメディアに入ったデータをサルベージする仕事もやっているのだそうだ。また、「特許関係のコンサルタントもやっている」という。これは特許の係争で裁判などがあったときに、「昔このマシンにはこういう機能が搭載されていた」ということを証明するために、現物のコンピュータを持っていて裁判所に持っていけるというのは強力な武器になるということだそうだ。
さて最初の話に戻るが、Sellamは日本のコンピュータコレクターを探している。最終的には日本でもVintage Computer Festivalのようなイベントを開きたいという希望を持っている。実際にイベントを開くには場所や料金の問題があるが、何はともあれ古いコンピュータを出品できる人がいなければ話にならない。もし彼と話が合いそうなコレクターの方がおられたら、Vintage TechのWebページから連絡をとってみていただきたい。
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