今日はJETROのセミナーに出席してきた。Silicon ValleyにはJTPA とかSVJEN といった日本人による団体がいくつか存在するが、JETROは日本の政府の出先機関である。そのJETROにSan Francisco支部というのがあり、シリコンバレーはそのSF支部の管轄ということになっているらしい。
今回のセミナーは「ライブドアの虚栄はアメリカで可能だったのか -M&Aとアメリカ会社・証券法」というもの。
今回のセミナーの講師はEric Marcks氏、Miharu Furihata氏という2人の弁護士で、Squire, Sandars & Dempsey LLPという法律事務所に所属している。Furiharaさん(漢字は分からない)は日本人だが、Marcksさんも流暢な日本語でスピーチをした。経歴を見ると九州大学で学んだ経歴があるとのことで、あったがそれにしても日本語がお上手であった。
日本にいると、まずこのような会社法・証券法専門の弁護士との接点はない。シリコンバレーの日本人ソサエティという小さいながらもいろいろな業種の日本人がいるところにいると、こういう異業種の人の話が聞ける。
しかしさすがに法律論になると部外者には分かりにくい。なんとか理解した範囲では、以下のようなことであった。
- ライブドアは子会社のライブドアマーケティング(LDM)を使って、マネーライフ(ML)という会社を買収した。
- その際現金ではなくLDMの株式と交換という形をとった。
- しかし事前にライブドアが管理する投資事業組合がMLの株式を取得していたので、この組合とにLDMの株を譲渡した。
- 同時にLDMの株を分割すると発表。株式分割があると、日本の市場では株が値上がりする。
- そこで投資事業組合はLDMの株式を市場で売り、利益を得て、その一部をライブドア本社に還流させた。
というわけ。問題は組合が実質的にはライブドアの身内で、LDMと組合の間で株式交換をしているが、実際には組合がMLの元の株主から現金で購入している。つまりライブドア、LDM、組合を1つと見れば、そこから現金で株を買っている。これはM&Aのために新株を発行したのではなく、実際に組合が売るために株を発行したもの(偽計)。組合が市場で株を売る際に株式分割の情報を流した(風説の流布)。
アメリカではM&Aで株式を発行する際にも、情報の開示が求められる。つまり、買われる側(今回の場合ML)が、買う側の会社(LDM)の株と交換するので、LDMの会社の情報を得ることができる。つまりLDMの株がMLの株と交換する価値があるかどうかを見定めることができる。日本の証券法の場合、M&Aのために発行される株式については情報開示が求められないので今回のようなことが起こった。
というのが2人の説明であった。日本の会社は長い間系列というものに縛られて、M&Aということはほとんど起きなかった。そのためM&Aに関する法律が整備されていないのであろう。しかし、今回のライブドアのケースに該当する法律がアメリカで制定されたのは1973年のことだという。つまり、ライブドアはアメリカでは33年も前に封じられていた法の盲点を突いて、今回の事件を起こしたということになる。33年というのは大きすぎないか?
今日のセミナーの冒頭で、JETROの人が趣旨を説明したのだが、その中で「日本に対する投資を促すために、外国企業が日本でM&Aできるような環境作りが必要だ」ということを言っていた。だとしたらライブドア事件のようなことが起きてから、その都度法整備をやっていくというようなことをやっていては遅すぎるのではないか?
また堀江貴文という人の個性が強烈すぎるもあるのだろうが、日本では堀江個人の行為がどうのこうのということばかり論じられているような気がする。そもそも企業の公正さとか株主に対する責任が問われるような環境を作らなければ、海外からの投資は期待できないのではないだろうか。
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