シリコンバレーでまた大きなスキャンダルが起きた。自分の会社のことなので書き難いのだが、新聞報道されていることだけでも書いておこう。もっとも今回のような取締役会で起きているようなことは、我々のレベルでは知りようがなく、皆ニュース報道で知ったのだが。
舞台はHP(Hewlett-Packard)の取締役会。会長のPatricia Dunnという人が、取締役のGeorge Keyworthという人に辞任を求めた。内部情報を外に漏らしたのが原因だ。しかしその裏を取るために、外部の専門家を雇って電話の通話記録を調べた。これはID盗難に等しいということで法的な問題が生じている。もちろんモラル面の問題もあって、別の取締役のThomas Perkinsという人が抗議して辞任をしたというもの。
話は今年の1月に戻る。前の年にCEOのCarly Fiorinaを辞めさせて、外部からMark Hurdを後任者としてつれてきた。その後取締役会でLong Term Strategy(長期計画)が話し合われるのだが、この内容がインターネットニュースサイトのCNETに出てしまった。まだ取締役会の中だけで話し合われていた段階であったため、会長のPatricia Dunnは盗聴の専門家を雇って、取締役メンバーの電話の通話記録を調べるように依頼する。
ここで問題になったのがPretextという手法。「口実、言い訳をする」という意味の単語だが、この調査会社がやったのは、取締役の名前をかたって、電話会社のウェブサイトにアカウントを作り、そこで通話記録を調べたというものだ。
後日この「証拠」を元にKeyworthに嫌疑がかけられ、彼が情報漏えいを認めたために取締役を辞めさせられる。しかし同じように通話記録を調べられたPerkinsがDunnのやったことに抗議して辞任した。これが事件の流れである。
実は今回登場したDunn、Keyworth、Perkinsの3人は皆社外取締役だ。今日のSan Jose Mercury NewsにHPの取締役会メンバーが載っているが、10人のうち、HPまたはCompaqから取締役に出世したのは4人だけだ。CEOとして招かれたHurdを入れても5人。他の5人はすべて外部取締役ということになる。外部の人間だからこそ会社を外から冷静な目で見ることができる。しかし、同時に気心が知れていないもの同士なので、喧嘩(争いごと)も平気で行う。さらには今回のようにスパイのようなことまで行う。
Patricia Dunnは去年Carly Fiorinaを追放して有名になった社外取締役だ。あれは社外取締役が会社の自浄作用に寄与したことを示した例であった。ただ、今回のスパイ行為は・・・どうなのかな?
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