癌の話 に「 タバコをすっても気持ちよくならないワクチン」が開発中とあった。「禁煙するのに薬を使わなけりゃならんのか?」と思うのだが、需要があるから研究するのでしょうな。私Jabroniは嫌煙家なので、タバコを止めるのが苦しいという感覚が分からない。「結局は本人の意思が弱いから止められないんだろ?」と考える。しかしここアメリカでは(安直にも)薬を使って禁煙したいということか?いや、それはまだマシな方で、アメリカの喫煙者は、「タバコが止められないのは、自分のせいじゃない。悪いのはこんなものを我々に与えたタバコ製造会社だ」と本気で思っているらしいのだ。
truth という「反タバコ」を訴えるCMを出している会社(NPOなのかな?)がある。「反タバコCM」と言っても、「健康のため吸い過ぎに注意しましょう」などという甘っちょろいものではない。ひたすらタバコ会社を糾弾するというモノである。以前からいろいろなCMを流している。覚えているのは、
- 喫煙者の父親を癌で亡くしたという人が出てくる。その横でTruthの人なのか、タレントか分からないが女性がいて叫ぶ。「タバコ会社は新しい顧客をReplacement Smoker(代替喫煙者)と呼んでいた。この人には代わりになる父親はいないのよ!」
- 大都会のビル街に、デモ隊がやってくる。ターゲットのタバコ会社のビルの前にはその会社の立てた星条旗がある。デモ隊はその隣に別の旗柱を立て星条旗を揚げるが、途中で止めて半旗にする。一人が拡声器で叫ぶ、「この会社のタバコで1日に何百人も死んでいるので、追悼の意を込めて半旗にしている。あんたの所も半旗にしないのか?」
と、こんな具合。嫌煙家の筆者でも「そんなにタバコ会社をいじめなくてもいいのでは」と思うほど過激である。このようにtruthのCMは全体的にスローガン色が強く、ユーモアがあってもブラックで、トーンが暗めであった。
ところが最近、新しいシリーズでFair Enough というのが始まった。これが今までとはまったく雰囲気の違う。舞台は1980から90年代のタバコ会社の重役室。ここで会社のお偉いさん(もちろん悪役です、ここでは)がタバコのキャンペーンのブレーンストーミングを行っている。しかも誰かが喋るたびに、昔懐かしいテレビコメディのような笑い声が入っている。これもいくつかパターンがあるのだが、特に覚えているのが、
- 「若者をターゲットにした新製品のアイデアはないかね?」 「フルーツ味のタバコの話はしましたよね?」 「ライフセイバーの飴とデータ比較ができるね」 「箱の中に風船ガムを入れたらどうでしょう?」 「こんなのどうでしょう、タバコそのものをシュガーコートして、えーと・・・えーと・・・」 「タバコガムボール!」
- 「誰かが間接喫煙(Second hand smoking)には害がないと言わなきゃ駄目だ」 「学会ではそんな説はないよ。我々の側につくのは専門家として自殺行為だ」 「我々で専門家を作ろう」 「間接喫煙のリスクを別のリスクで言い換えるような研究をしたらどうでしょう?」 「メッセージは簡単な方がいい」 「間接喫煙にはリスクはない、それがメッセージだ」
という2つ。最後に画面には"It might be funnier if it wasn't true..."というテロップが出る。すなわち「これが本当じゃなかったら、もっと面白かったのに」というわけ。Webページを見てみたら、本当にタバコ会社のブレーンストーミングの議事録が残っていて、そこから無茶なアイデアを引っ張り出して、つなげてCMにしたらしい。このページではシリーズすべてのビデオが閲覧可能だし、これからも新作が作られるようなことも書いてある。
タバコ会社は一時期、タバコは無害だというためにいろいろと嘘やら苦しい言い訳をしてきた。結局はそのために今でもこのように糾弾されているわけだ。このCMにしても、タバコ会社が「公知活動」という名目で金を負担させられているのであろう。それでもあれだけ立派なビルにいるのだから、タバコ会社は儲かるってことなのだろう。
「喫煙者も被害者」という論理はちょっと納得しかねるが、こういう過激な抗議のお陰でカリフォルニア州ではレストランは禁煙。我々嫌煙家は快適な環境を「満喫」できるのだ。
最近のコメント