Oakland Athleticsのゲームを見るようになってから、読みたいと思っていた本がある。マイケル・ルイス著「マネーボール」という本である。先日紀伊国屋書店で偶然見つけて購入し、一気に読んでしまった。
この本はAthleticsのジェネラルマネージャーのBilly Beaneが、いかにチームを作っていったかという物語である。
先日McAfee ColiseumでYankees戦を見た時に手に入れた、A'sのイヤーブックに彼が就任した1998年からの、MLBチームの成績上位チームが載っている。それによれば、1位はNew York Yankeesの794勝、2位Atlanta Braves 780勝、3位Boston Redsox 734勝、4位St. Louis Cardinals 732勝利、そして5位がOakland Athleticsの732勝。Beaneの戦力獲得の効果が出始める2000年からだと、Yankees、St. Louis、Atlantaについで4位に上がり、5位にSan Francisco Giantsとなる。
さぞかし金を使っているのかというと、さにあらず。選手の年俸はYankeesの3分の1しかない。A'sのオーナーが代わって、急に資金が少なくなった。その少ない資金でいかに勝てるチームを作るかが、Beaneの課題であり、そのためにコンピュータとインターネットを駆使して、選手を成績を調べ上げる。そして「自分の基準」で無名の選手を発掘してくるのである。
このBeaneの基準というのが独特で、とにかく出塁率にこだわる。その次が長打率。そのため高校の選手で打率が低くても、四球が多い選手は「選球眼がよい」と評価される。それに対して盗塁、犠牲バンドは評価しない。四球はピッチャー側のエラー(失敗)と主我勝ちだが、打者の選球による勝利とみなす。犠牲バンドは進塁というよりも、アウトカウントを自ら増やすものなので評価しない。盗塁はせっかく出したランナーを自らアウトにするリスクがあるので危険である。というのがBeaneの考えだ。しかもこれは単なる思い付きではなく、過去の試合のデータを調べ上げて、選手のどのプレイが最終的に試合の勝利に貢献したかを調べた上での結論なのである。
Athleticsのゲームを見に行くと、いくつか気付くことがある。
- 盗塁やバンドがほとんどない。
- シーズンを通して3割打てないChavezやCrosbyがクリーンアップを打ち続けている。
- YankeesのJohnny DamonとJason Giambiが出てくると、ブーイングが起きる。
これもこの本を読むと理由が分かってくる。まず1はGMのBeaneが嫌うプレイで、そのGMの考えが現場まで周知徹底している。2は、フォアボールを選ぶという打率に表れない数字を評価しているため。Chavezは長打力もあるので4番を打てるのである。そして3はともに元Athleticsにいた選手。活躍して年俸が上がったため(GiambiはMVPになっている)、Athleticsでは雇いきれなくなり、ともに2002年にFAで移籍した。GiambiはYankeesに、DamonはRedsoxに行ったが、今年Yankeesに移った。
この時にBeaneのA'sがどういう行動に出たかも、この本に載っている。A'sに残っている選手またはよそにいるもっと安い選手で、彼らの穴を補充する。その際に使われる計算式はもちろんBeane独特のものなので、Yankeesのような金満チームには理解できない。さらにFAで選手をとると、その見返りにドラフトの1位の指名権を元のチームに譲渡する。さらにリーグから補充の意味で1位の選択権をもらう。2002年はもう一人FAで出て行ったため、A'sの1順目は、元々持っていた指名権と、3人のFA選手による補充があったため1順目に7人の指名ができた。このとき最初に指名されたのがNick Swisherであった。
他にもシーズン途中でのトレードの話など、Beaneのしたたかさ、頭のよさがうまく描かれている。A'sのファンでない人にもお勧めしたい本だ。
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