今日は出かけていて野球を見ることができなかった。Athleticsは救援の切り札のHuston Streetが打ち込まれて負けてしまったようだ。それにしても同じ地区の最下位のTexas Rangersに1勝2敗は痛い。
昨日に続いてマイケル・ルイスの「マネーボール」の話。
Oakland AthleticsのGM Billy Beaneが盗塁と犠牲バントを軽視し、出塁率と長打率にこだわるようになったのは、過去の試合を調べ上げて、それがチームの勝利に貢献することに気付いたからだ(ついでに言うと、他チームでは見落としているため、そういう選手の年俸は安いので取りやすかった)。しかし、このように野球というゲームを統計的に処理して、今までと異なった価値観で見るという行為は、Beaneのオリジナルではない。
それを最初にやったのはBill Jamesという人で、この「マネーボール」の4章で彼の業績が描かれている。4章のタイトルは「フィールド・オブ・ナンセンス」。つまり野球で公式に使われているスコアブックや、それに基づく選手の評価は馬鹿げているということを言っている。
例えばエラー。エラーはその野手の失敗であるが、ではエラーが多い選手は守備が下手かというとそうではない。ヒット性の当たりに飛びついてもアウトにするような野手は、エラーの数は増えるが間違いなく守備は上手い。Jamesはこれに対して守備機会(1試合あたり成功した守備の回数)を提案する。打点も正しい評価方法とはいえない。打点を挙げるには、その選手が打席に入る時点でランナーが出ている必要がある。これはその選手の実力ではない。
Bill Jamesはプロ野球の選手もなく、新聞記者でもない。単なる野球ファンである。しかしJamesはこのような独自の分析をして毎年「野球抄」という本にして、自費出版する。「野球抄」というのは日本語訳に出てきた訳語だが、インターネットで検索したところ、原題はBaseball Abstractsであった。最初に出たのは1977年。最初はマニアに受け入れられ、少しずつ版数を伸ばしていく。やがてSTATSという統計会社となり、野球の様々なデータを解析していくが、それに価値を認めるのはあくまで野球ファンであり、MLBの現場や球団経営者からは「よそ者」として無視されてしまう。
Billy BeaneがこのBill Jamesの理論を実際に取り入れるのは2000年になってから。ようやくJamesの努力が報われたというわけだ。Billy Beaneが実践する数式が正しいのかどうかは証明することはできない。野球は最終的には人間の選手がプレイするものだから、数字通りには進まない。しかし、はるかに低い年俸でYankeesと同等の成績を上げているのは事実である。野球というスポーツを統計的に解析することは決して無駄なことではないのであろう。
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