前回書いた「スポーツチームの移動」の続き。今日はSan Francisco 49ersのSanta Claraへの移動について書く。これについては、49ersのブログで散々書いてきた。詳しくはこちらを見て欲しい。
まず背景として、San Francisco 49ersが現在使っているMonster ParkがNFLでもっとも古いスタジアムであることがある。チームにとっても、ファンにとっても新スタジアム建設が長年の夢、悲願であった。
そして去年の7月に、「2012年に同じ場所に新スタジアムを建設する」という発表が、チームとSan Francisco市からあった。しかし、これはその後いろいろと変化していく。
まず、今現在スタジアムのある場所に立て直すとすると、概算で8億ドルもの金がかかる。もちろんこれは試算であって、実際に着工すればもっと予算をオーバーすることは明らかである。そこでSF市はこれを周辺地域の再開発に絡めたり、2016年のオリンピックを誘致するための口実に使ったりと、金を工面するのに苦労していた。
そこで資金調達の目処が立たないと見た49ersは、「バックアッププラン」としてSanta Clara市(これはシリコンバレーの中のSan Joseに隣接する市である)とも交渉を始める。そして11月にCandlestick Parkでの新スタジアム建設を諦めてSanta ClaraのGreat America Parkwayに作る計画を発表した。この計画では2012年を目指してGreat America(テーマパーク)の隣にスタジアム建設を予定している。この場所は49ersの本社があり、チームが夏にトレーニングキャンプを行っている場所でもある。
しかし、これで完全にSF市との縁を切ったわけではなく、SF市からも「いい話があれば聞く用意はある」という姿勢であった。そのため、SF市はHunters Pointという別の場所に新たにスタジアム建設をするという計画を作り、49ersに提案している。このHunters Pointというのは、第2次世界大戦前からアメリカ海軍の軍艦製造工場があった場所で、今は廃墟になっている。この場所は放射線および油によって汚染されており、海軍の工場が撤退して60年経っている今でもその汚染が残っている。また、このHunters Pointは今のCandlestic Pointよりも北東にあり、高速道路の101号線からかなり遠くなってしまう。ここでまた、NFLチームのスタジアム建設にかこつけて、汚染の清掃を行い、使い道のない土地を再開発しようというSF市の思惑が垣間見えるのである。
49ersのオーナーはこのSF市の提案を聞きながらも、これはあくまでバックアッププランで、SC市での建設を優先するとしている。まあ、これは当然である。Hunters Pointの清掃は長年軍がやってきたが、未だに残っている。今から急いだところで2009年(スタジアム建設を開始する年)までに清掃が完了する保障はない。また101号線からのアクセスの悪さも問題である。SF市は高速道路からの支線を敷くとしているが、これについてはまったくプランがないのが実情である。
というわけで、現状ではSF市の具体策が出るのを待っているところだが、SC市が圧倒的に有利である。Santa Clara市に「決定」せず、まだSF市の提案を聞くという姿勢は、現在のフランチャイズの自治体に対する礼儀なのかも知れないが、うがった見方をすればSFとSCの二つの市を天秤にかけ、有利な条件を引き出そうとしているように思える。SF市にも政治的な思惑が見えるのだが、49ersのオーナーにも駆け引きをしてやろうという意図が見えてしまうのである。
ちなみに、Santa Clara市に移転してもSan Francisco 49ersというチーム名は変更しないそうである。
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