ここ に書いたことの続き。Telecommuteすなわち「在宅勤務」の話題。
以前、シリコンバレーのIT企業におけるTelecommutingについて、情報処理学会の学会誌に記事を書いたことがある。自分の同僚の話をいくつか書いたのだが、この記事は結構反響がきた。日本とアメリカの仕事文化の対比として面白く受け取られたのかも知れない。あの記事を読んでくれた人には繰り返しになってしまうが、またここでも紹介してみたい。
前回のMercury Newsの記事で報道されたHPの社員の話である。ただ、私がいるのは研究所なので、他の部署と比べると、かなり職務規定などは「ゆるい」。
私の同僚のKevin。彼はHaywardというところに住んでいて、会社のあるPalo AltoとはSan Francisco湾をはさんで対岸にある。車で通勤するには橋があるのだが、これが通勤時間になると必ず大混雑になる。そこでKevinは橋が込む前に渡ってしまうことにした。つまり朝7時に会社について、夕方4時には会社を出て家に向かう。彼は結婚したときに「農家に住みたい」という夢を実現するために、Haywardの農家を購入し、馬やにわとりと暮らすライフスタイルを選んだのだ。
隣のビルにいるIan。彼はPebble Beachというところに住んでいる。ゴルフ場で有名な場所だが、太平洋に面したリゾート地である。会社には高速がすいていても2時間以上かかる。そこでIanは上司と相談して、特殊な通勤スタイルをとっている。月曜日と金曜日は在宅勤務する。火曜日の朝、車でPalo Altoにやってきて会社に出る。火曜と水曜の夜は友達の家に世話になり、木曜日の夜Pebble Beachに帰る。マネージャーはなるべく火曜日から木曜日の間に会議をスケジュールするので、グループの中で問題はない。IanはPebble Beachに住みながらもゴルフはしない。「海の見えるところで暮らしたい」というのがこの通勤生活の動機だそうだ。
私と同じビルに「席だけはある」Georgeの場合。Kevinに似ているが、彼もまた「自然の中で子育てをしたい」という理由で、Washington州に住んでいる。当然車で会社に来ることはできないので、毎日在宅勤務となる。家からインターネットとVPNで会社につながり、そこで何百台もあるコンピュータを操っているのだとか。週に1,2度電話でマネージャーと話しているので特に問題はないという。ちなみに社内に席は残っているが、出社するのは年に3回ほどだそうだ。
と、ここまで3人は研究者なので、わがままな事情が多い。事務職でも1人いる。Theresaは私のいる部門のアドミン。部門長の秘書が主な仕事だ。彼女の場合、もともとシリコンバレーにいたのだが、夫が失業してしまった。夫の仕事を捜し求めて行き着いた先は、Anaheim。同じカリフォルニア州の中だが、飛行機で1時間、車だと6時間くらいか。当然通勤は不可能。しかし部門長は辞めて欲しくないと思ったので、彼女はサテライトオフィスで働くことになる。HPのAnaheimのオフィスに椅子を借りて、社内LANと電話で仕事をこなす。
このように理由は人によって違うが、その気になれば会社に出社しなくても仕事はできる。インターネットによって世界は変わったが、Telecommutingによって通勤スタイルが大きく変わった。まさに「ライフスタイル」を変えたと言えるのであろう。
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